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AIエージェントとは?「業務を自律化する次世代AI」は、ひとり情シスの救世主となるか

ここ数年、「AIエージェント」と呼ばれる自律型AIが次々と登場しています。
AIエージェントとは単なるチャットボットや補助的なツールではなく、複雑な業務を自ら判断し、実行まで担うことができる次世代のAI技術です。

とくに注目されているのがサイバーセキュリティ分野での活用で、限られた人員で多様なシステム運用やセキュリティ管理を担う「ひとり情シス」の現場において、AIエージェントは心強いパートナーになる可能性を秘めているのです。

本記事では初心者にもわかりやすく「AIエージェントとは何か?」を解説しながら、中小企業が直面する課題とAIによるセキュリティ対策の今とこれからを紹介していきます。

目次

AIエージェントとは?未来の働き方を変える自律型AI

AIの進化が加速する現在、私たちの業務環境は大きく変わりつつあります。
「この問題を解決してほしい」と目標を伝えるだけで、AIが自ら考え、最適な方法を選んで実行する——。
こうした「AIエージェント」と呼ばれる技術が、企業の業務に組み込まれ始めているのです。

チャットボット、生成AI、AIエージェント – 今までのAIと何が違うのか?

AIエージェントは、チャットボットや生成AIと何が違うのでしょうか。
最大の特徴は、状況を理解して判断し、そしてAIエージェント自らが実行できることにあります。

例えば、「社内のWi-Fiにつながりません」という同じ問い合わせに対して、チャットボット・生成AI・AIエージェントがそれぞれどのように対応するのかを比較してみましょう。

チャットボット

あらかじめ決められた質問と回答のセットで動く簡易的なツール。
キーワードを拾って関連する定型文を返すだけで、会話の流れを理解する能力は低く、想定外の質問には「わかりません」と答えたり、的外れな返答をすることがあります。

Wi-Fi問題への対応例

「Wi-Fiルーターの再起動をお試しください。解決しない場合はIT担当者に連絡してください」といった定型文を返すのみ。

生成AI(ChatGPTなど)

大量の情報から学習し、人間らしい自然な会話ができるAI。
質問に対して幅広い知識から回答を生成し、追加の質問にも柔軟に対応できます。
ただし「情報を提供する」ことにとどまり、実際のシステムを操作したり、問題を直接解決したりすることはできません。

生成AI
Wi-Fi問題への対応例

「Wi-Fi接続の問題にはいくつかの原因が考えられます。①デバイス側の問題、②Wi-Fiルーターの不具合、③ネットワーク設定の誤りなどです。まず、デバイスのWi-Fiを一度オフにしてから再度オンにしてみてください…」など、状況に応じた詳しいアドバイスを提供しますが、実際のネットワーク状況を確認することはできません。

AIエージェント

情報を提供するだけでなく、実際に行動して問題解決まで担うAI。
たとえばネットワークの不具合が発生した場合、自らシステムにアクセスして状況を確認し、問題箇所を特定、必要に応じて自動で修理依頼を出すことも可能です。
人間が「やってください」と指示を出さなくても、目標に向けて自律的に判断・行動できるのが大きな特徴です。

AIエージェントイメージ
Wi-Fi問題への対応例

ネットワーク監視システムに自動で接続し、「3階東側のアクセスポイントに障害が発生しています。技術者に修理依頼を自動で送信しました。復旧までの間は2階会議室のネットワークをご利用ください」と、具体的な解決策まで提示します。

「指示を待つAI」から「自分で考えて動くAI」へ

AIエージェントの最大の特徴は「自律性」にあります。人間からの細かい指示を待つのではなく、与えられた目標に向かって自ら判断し行動する能力です。
例えば「社内のセキュリティ状況を監視して」という指示だけで、先進的なAIエージェントは下記のような一連の行動を、人間の詳細な指示なしに実行できるようになりつつあります。

・ログの異常を自動検知
・不審なIPアドレスからのアクセスを発見
・同様のパターンをデータベースで検索
・脅威の種類と危険度を評価
・一部の脅威に対してはアクセスをブロック
・対応レポートを自動生成

世界と日本の導入状況

現在、このようなAIエージェント技術は、海外、特に米国や英国を中心に実用化が進んでいます。
海外の大手セキュリティ企業では、一部の脅威に対して人間の介入なしに自動で対応できる、AIベースのセキュリティソリューションの提供が始まっています。

一方、日本での導入は、まだ初期から中期の段階にあります。
大企業や金融機関を中心にAIセキュリティツールの導入が進められていますが、現時点では完全な自律型AIというよりも「AIによる検知+人間による判断・対応」といったハイブリッド型が主流です。

ただ近年では生成AIの進化を背景に、個人向けでも「AIエージェント」と呼ばれる存在が登場しています。
たとえば「Manus(マヌス)」のように、ユーザーの目的や意図を理解し、自律的に行動できるAIが注目を集めています。
こうした動きはセキュリティ分野にも波及し、将来的には「人の代わりに考え、動いてくれるAIエージェント」が実際の現場で活躍する時代が訪れると見られています。

今後の展望 – 人間との協働モデル

AIエージェント技術は急速に進化しており、今後はより高度な自律性を持つソリューションが、中小企業でも利用しやすい形で提供されると期待されています。

ただし、当面は人間とAIの協働モデルが現実的です。AIが日常的な監視や初期対応を担い、重要な判断や例外的な状況への対応は人間が行うという役割分担が進むでしょう。

「あなたが眠っている間も、AIエージェントは黙々とシステムを見守り、定型的な問題に対しては自動で対応する—」こうした環境は、日本の企業でも徐々に現実のものになりつつあります。

AIエージェントを使うビジネスマン

ひとり情シスの課題とAIエージェントの可能性

情報システム部門が直面する課題

中小企業の情報システム担当者、特に「ひとり情シス」と呼ばれる一人で全てを担当する環境では、業務範囲の広さと時間的制約が大きな課題となっています。

一般的な業務には、日常的なヘルプデスク対応、社内ネットワーク管理、セキュリティ対策、システム導入・更新など多岐にわたる責任が含まれます。
特に難しいのが24時間365日の監視体制で、サイバー攻撃や障害は営業時間外に発生することも多く、人的リソースの限界が明らかです。

中小企業の情シス担当者の多くが慢性的な時間不足を感じており、セキュリティ監視やインシデント対応に十分なリソースを割けていないと言われています。

AIエージェントによる課題解決

AIエージェントはこうした情シス部門の課題に対して、有効な解決策となる可能性を秘めています。特に海外では実装が進んでおり、今後日本国内でも普及が期待されています。

まず、24時間365日の監視業務を自動化できる点が最大のメリットです。
先進的なAIエージェントシステムでは、ネットワークを常に監視し、異常を検知すれば分析して適切な初期対応を行い、必要に応じて担当者に通知する機能の開発が進められています。
先進的なAIエージェントは、ネットワークを常時監視し、異常を検知すると自動で分析・初期対応を行い、必要に応じて担当者に通知する機能を備えつつあります。

従来のセキュリティツールが「検知」のみだったのに対し、次世代のAIエージェントは「検知 → 分析 → 対応 → 報告」までの一連のプロセスの自動化を目指しています。
例えば、不審なログイン試行を検知した場合、攻撃パターンの分析、危険度評価、一時的なブロック措置、レポート作成などを自律的に実行するというビジョンが具体化しつつあります。

国内でもこうした高度な自動化の実現に向けた取り組みが始まっています。

AI同士の連携による自律的問題解決

AIエージェントの可能性は、複数のAIが連携する環境でさらに広がると考えられています。
たとえば、監視AI、セキュリティAI、インフラ管理AIなどが連携し、DDoS攻撃のような複雑な脅威にも自律的に対応できるようになれば、深夜のセキュリティ攻撃においてもシステムの停止を防ぐことが可能になります。
その結果、情シス担当者の業務負荷は大幅に軽減されるでしょう。

人とAIが共に働く時代に、情シスはどう変わる?

AIが人の代わりに仕事をする時代が来る――そんな話も、AIエージェントの登場によって少しずつ現実味を帯びてきました。
とはいえ「AIに仕事を奪われる」未来が訪れるわけではありません。
むしろ、人とAIがそれぞれの得意分野を活かしながら、共に働く時代が始まりつつあるのではないでしょうか。

情シスの役割は、より戦略的に

AIエージェントが日常的な監視や初動対応を担うようになれば、情シス担当者は「目の前のトラブル対応」に追われる時間を減らし、「どうすればシステム全体をもっと安全で効率的にできるか」といった上流の設計・判断業務に時間を割けるようになります。

たとえば、社内に導入されているAIエージェントの行動ルールを設定したり、例外的な状況に対する判断基準を定めたりと、AIを活用する“仕組み”を設計する立場へと進化するでしょう。

「ひとり情シス + AI」で、実質チーム体制に

中小企業においては、情シスを1人で担っているケースが少なくありません。
そうした現場にとって、AIエージェントは もう1人の情シス のような存在になっていくかもしれません。

人間が対応しきれない時間帯の監視やログの分析、初期対応の自動化などをAIが黙々とこなしてくれることで、実質的にチーム体制で運用しているような状態が作れるのです。

情報システム担当者に求められる「新しいスキル」

AIが業務に関わるようになると、情シス担当者には新たなスキルが求められるようになります。

といっても高度なAI開発スキルが必要になるわけではありません。重要なのは、「AIに何を任せ、どこを人が判断すべきか」を見極める力です。

たとえば、「このアラートが出たときはAIに自動対応させても問題ないが、こういうケースでは人間が判断するべき」といった判断の分岐点を設計する力が求められます。

これは、今までの「手を動かす力」から、「仕組みを整える力」への移行とも言えます。

未来の準備は、まず「知ること」から

AIエージェントは、すぐに誰もが使えるものではないかもしれません。
しかし、今このタイミングで「こういう技術が出てきている」と知っておくことが、数年後の選択肢を大きく広げるはずです。

「人とAIが一緒に働く時代」がすぐそこまで来ている今、情シスの役割もまた進化の入り口に立っています。

情報を学ぶ人

おわりに

AIエージェントという言葉は、まだ多くの人にとって馴染みが薄いかもしれません。
しかし、その可能性はすでに世界中で注目されており、特に中小企業のように人手が限られた現場にとって大きな力となる存在です。

ひとり情シスという立場では、日々の業務に追われ新しい技術に目を向ける余裕がないこともあるでしょう。
ですが、AIエージェントは「いつか余裕ができたら」ではなく、「今知っておくべき技術」です。
なぜなら近い将来、日常の業務に少しずつ入り込んでくる可能性があるからです。

初めは小さな業務支援かもしれませんが、やがては「共に働くパートナー」へと進化していくでしょう。
人の判断力と、AIの実行力。
その両方をうまく組み合わせることができれば、情報システム部門の在り方そのものが、もっと前向きで戦略的なものに変わっていくはずです。
これからどんな活用が広がっていくのか、今後の展開にぜひ注目していきましょう。


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