度々ニュースで話題となるランサムウェアによる被害。
大企業だけの話かと思いきや、警視庁の発表によると中小企業の被害が最も多く報告されていることをご存じでしょうか。
この記事ではランサムウェア攻撃のリスクを5つに分類して、具体的な事例を交えながら解説していきます。
ランサムウェアとは何か
ランサムウェアとはそもそも何か ランサムウェアとマルウェア(悪意のあるソフトウェア)の一種です。
コンピューターに被害をもたらし、その復元と引き換えに身代金を要求する手口から Ransom(身代金)とSoftware(ソフトウェア)を掛け合わせ、ランサムウェアと呼ばれています。
ランサムウェアの種類 ランサムウェアには代表的ものとして、暗号化型と画面ロック型が存在します。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
暗号化型ランサムウェア
感染するとンピューターのデータが意図的に全く異なるデータへと暗号化され、所有者が利用できなくなってしまいます。
暗号化されたデータを復元するためには復元するための復号化キーが必要になりますが、その復号化キーはランサムウェアを仕掛けた側が持っているため、復号化キーと引き換えに金銭を要求されるのが暗号化型の手口です。
画面ロック型ランサムウェア
企業や個人のデバイスに入り込まれ、ロックをかけられる、またはロックをかけたように見せかけるものです。
コンピューターのデーターが操作不能となり、解除コードと引き換えに身代金が要求される手口のことで 支払いを要求するメッセージが画面にずっと表示されるのが代表的な挙動です。
これ以外にも複数のランサムウェアが存在しています。
ランサムウェアの種類は増加し続け、その手法も高度化しています。
ランサムウェアが増加している理由
ではなぜ、ランサムウェアは増加し続けているのでしょうか。
テクノロジーの進化やサイバー犯罪のビジネス化が、攻撃をさらに巧妙なものにしています。
クラウドやIoTデバイスの普及、リモートワークの拡大など、デジタル環境の複雑化も影響を及ぼし、脆弱性を突く新たな脅威が次々と現れています。
テクノロジーの進化
攻撃手法の進化により、より巧妙化されたランサムウェアが登場しています。
新しい暗号化技術や暗号通貨と関連するブロックチェーン技術などが悪用され、追跡が難しくなっています。
機械学習やAIを悪用した自動化された攻撃も増えており、攻撃の効率と規模が拡大しています。
サイバー犯罪のビジネス化
サイバー犯罪者がランサムウェアを利用して利益を得るための組織的な仕組みや手法として、ランサムウェアの「ビジネスモデル化」が進んでいます。
ダークウェブでは「Ransomware as a Service (RaaS)」と呼ばれるサービスが存在しており、サイバー犯罪者がランサムウェアを攻撃キットを提供し、他の犯罪者がそれを利用して攻撃を行うケースが増えています。技術的な知識が少なくても容易にランサムウェア攻撃を行えることが増加の要因とされています。
また犯罪組織はランサムウェアを利用して大規模な攻撃を行い、利益を得るために技術を進化させ続けています。
デジタル環境の複雑化
クラウドコンピューティングの普及、IoTデバイスの増加、リモートワークの拡大など、 デジタル技術の進展もランサムウェアの増大に直接的な影響を与えています。
デジタル環境が複雑化したことにより新たな攻撃対象や脆弱性が増加し、サイバー犯罪者がこれらを悪用しやすくなっているためです。
脆弱性の悪用
ランサムウェアに限ったことではありませんが、ソフトウェアやシステムの脆弱性を悪用されるケースも目立ちます。
OSやソフトウェアを更新せず、古い状態のまま利用し続けることで感染リスクが高まります。
なぜ中小企業はランサムウェアに狙われやすいのか?
中小企業がランサムウェア攻撃に遭いやすい理由は、いくつかあります。
ここでは、代表的な5つのリスクについて詳しく解説していきます。
1. セキュリティ対策の遅れ
中小企業は、大企業に比べてセキュリティ対策への投資が少なく、最新のセキュリティ対策ソフトを導入していないケースが多く見られます。セキュリティ担当者が不足している場合や、セキュリティ対策の専門知識が不足している場合も少なくありません。
そのため最新の脅威に対応しきれず、ランサムウェア攻撃の標的になりやすい状況にあります。最新版のセキュリティ対策ソフトを導入していない企業は、攻撃者に対して無防備な状態と言えるでしょう。
2. 従業員のセキュリティ意識の低さ
従業員のセキュリティ意識が低いことも、中小企業がランサムウェア攻撃に遭いやすい原因の一つです。
例えばフィッシングメールに騙されて悪意のあるプログラムをダウンロードしてしまう、パスワードを簡単に設定してしまうなど、従業員のちょっとしたミスがランサムウェア攻撃につながる可能性があります。
近年では改ざんされたWebサイトにアクセスしただけでランサムウェアがダウンロードされてしまうケースもあり、こういったケースを「ドライブバイダウンロード」といいます。
ユーザーが何も操作しなくても感染してもする場合があるため、不審なWebサイトの閲覧についても注意が必要といえるでしょう。
3. 最新の脅威への対応不足
ランサムウェアの脅威は日々進化しており、従来のセキュリティ対策では対応できない新しい攻撃手法も登場しています。従来のセキュリティ対策ソフトでは検知できない「ゼロデイ攻撃」と呼ばれる攻撃手法は、最新の脅威の一つです。ゼロデイ攻撃は、まだセキュリティ対策ソフトに登録されていない脆弱性を悪用するため、対策が難しいと言われています。
中小企業では、最新の脅威情報を入手し、適切な対策を講じることが重要です。
セキュリティ対策ソフトの更新や、セキュリティに関する従業員教育などを定期的に実施することで、最新の脅威に対処することができます。
ランサムウェア攻撃のリスクを具体的に解説
ランサムウェア攻撃は、企業にとって深刻な影響を及ぼします。
ここではランサムウェア攻撃によって発生する可能性のある5つのリスクについて、詳しく解説していきます。
1. 業務停止による経済的損失
ランサムウェアに感染すると、重要なデータが暗号化されてアクセスすることができなくなります。
業務を継続することが難しい場合、売上や利益は減少する可能性があります。また復旧作業には多大な時間と費用がかかるため、企業経営を圧迫する要因となります。
2. データ流出による顧客情報漏洩リスク
ランサムウェア攻撃では、企業の顧客情報が盗難されるリスクも存在します。
顧客情報が不正に利用されることがあれば、顧客に大きな被害が及びます。
3. 評判・信用失墜によるブランドイメージの低下
企業としての信頼が大きく低下します。
メディアなどで攻撃が報道されることで、大きな社会的批判にさらされる可能性もあります。
4. 法的責任
ランサムウェア攻撃によって顧客情報が漏洩した場合、個人情報保護法などの法律に基づいて法的責任を問われる可能性があります。また攻撃による被害で顧客に損害を与えた場合には、損害賠償請求を受ける可能性もあります。
ランサムウェア攻撃は、企業にとって大きな法的リスクを伴う可能性があるのです。
5. サイバー保険加入のハードル
ランサムウェア攻撃による損害をカバーするために、サイバー保険に加入する企業が増えています。しかしランサムウェア攻撃に遭ったことがある企業は、保険加入が難しくなる場合があります。
サイバー保険については、ランサムウェア攻撃のリスクが高い企業に対しては高額の保険料を提示されたり、保険加入事態を拒否されるといったこともあるようです。
ランサムウェア攻撃のリスクを理解した上で、適切な対策を講じることで、企業はこれらのリスクを回避することができます。
ランサムウェア対策に関する疑問
ランサムウェア対策はどのくらい費用について
ランサムウェア対策の費用は、導入する対策によって大きく異なります。
例えばセキュリティ対策ソフトの導入費用は数万円から数十万円、セキュリティ対策サービスの利用費用は月額数千円から数万円などです。企業の規模やセキュリティ対策のレベルによって、費用は変動します。
費用を抑えたい場合は無料のセキュリティ対策ソフトを導入したり、従業員向けのセキュリティ教育を実施したりするなど、コストパフォーマンスの高い対策を検討すると良いでしょう。
ランサムウェア対策は自社でできるか
ランサムウェア対策は自社でも可能でしょう。最新の脅威に対応するためにはセキュリティ対策に関する最新知識を習得(アップデート)し、セキュリティ専門家のサポートを受けたりすることが重要です。
自社対応が負担だと感じる場合は、セキュリティ対策サービスの利用を検討するのも一つの方法です。
専門のセキュリティチームが24時間365日、企業のセキュリティ対策をサポートしてくれるプランなどがあります。
ランサムウェアに感染してしまった場合
ランサムウェアに感染したら、まず落ち着いて対処することが重要です。感染したパソコンやサーバーをネットワークから隔離し、データのバックアップから復旧を試みます。更にセキュリティ対策ソフトでウイルスを駆除し、ランサムウェアの攻撃者を特定するための調査を行います。
もしランサムウェアに感染してしまった場合は専門家のサポートを受けることをおすすめします。
ランサムウェアの攻撃者と交渉したり、データの復旧を支援したりしてくれるサポートもあります。
まとめ
ランサムウェア攻撃は、中小企業にとって深刻な脅威です。この記事では、ランサムウェア攻撃のリスクを5つに分類して解説しました。
中小企業の経営者や従業員のみなさんは、この記事で紹介したリスクを理解した上で適切な対策を講じましょう。
ランサムウェア対策は、企業の安全を守るための必須事項です。