近年目にすることが増えた「XR」という言葉。
VRやARなど似ている言葉も多く、それらにどのような違いがあるか理解できていない方も多いのではないでしょうか。
本記事ではXRの基本的な概念から、VR・AR・MRとの違い、そしてメタバースやデジタルツインとの関係についても解説します。
1. XR(拡張現実)とは何か?
XRは「Cross Reality(クロスリアリティ)/ Extended Reality(エクステンデッドリアリティ)」の略称です。
XR(拡張現実)は、現実の世界とデジタルコンテンツを組み合わせたり、新しい仮想環境を創り出したりする革新的な技術を指します。
XRには、VR(仮想現実)・XR(拡張現実)・MR(複合現実)に加え、SR(代替現実)とDR(減損現実)などの技術が含まれます。そして、これら技術の総称が「XR」です。
2. なぜXRが注目されているのか
XRはデジタル技術により、現実の世界に仮想的な情報を統合することで、物理的に存在しないものを仮想現実を通して知覚することができます。
5Gによる通信環境整備が進み大量のデータを送受信できるようになったことで、データ量の大きいXR技術がより利用しやすくなりました。
またコロナウイルスによる外出自粛や非接触などがきっかけとなり、これまで現地に足を運ぶことでしか実現できなかったことに対してXR技術が導入されたことで、自宅からでもバーチャルで体験することができるサービスが増加しました。
現代は「モノ消費」を経て「コト消費」に移行したといわれており、新たな体験を提供する技術であるXRへの注目が高まっています。
3. XR技術の紹介
3-1. VR(仮想現実)とは
VRは「Virtual Reality(バーチャルリアリティ)」の略で、仮想世界を作り出す技術です。
専用デバイスであるVRゴーグルを着用することで、現実世界から遮断された360度の仮想空間にあたかも自身が存在する感覚に没入できます。また視覚的に仮想空間に存在するだけではなく、VRコントローラーを利用することで仮想空間のものを触ったり動かしたりすることもできます。
現実空間では体験できないような高所からのバンジージャンプやジェットコースターなどのエンターテイメント、ゲーム空間にあたかも自分が存在しているかのような体験や、コロナ禍ではVRによるバーチャル旅行なども話題になりました。
VR対応のゲームや映像視聴などのコンテンツは増加しており、現在は家庭用のVRゴーグルが安価に手に入れられるようになったことでVRがより身近なものとなっています。
3-2. AR(拡張現実)とは
ARは「Augmented Reality(アグメンティッド・リアリティ)」の略です。現実世界に仮想の映像を組み合わせて、新しい視覚映像を作り出す技術です。
建築現場に機材などを搬入する必要がある際に事前にARゴーグルを着用し、仮想の機材を実際の縮尺で表示させて搬入ルートの広さを確認したり、大型家具の購入前に自宅への配置イメージを確認することなどができます。
ARには専用デバイスがありますが必要でないケースも多く、ポケモンGOのようにAIカメラを使ったサービスも多く存在します。若い方を中心に利用者が多いスマホアプリのInstagramやSNOWなどにはARフィルターが使われており、話題のAIアバターを作成できるアプリなどにもAR技術が使われています。
ARはビジネス活用においても期待されており、手作業をARに置き換えることによる業務効率化や、言葉の壁がある労働者への技術指導などに利用される企業も増えています。
3-3. MR(複合現実)とは
MRは「Mixed Reality(ミックスド・リアリティ)」の略です。現実世界に仮想世界の情報を追加して融合させる技術です。
MRゴーグルを装着して実世界に仮想映像を組み合わせて表示し、手やMRデバイスを操作することで現実の世界でも同じ動作を行うことができます。MRと同じく仮想映像を表示するARはデジタル情報を表示させるだけですが、MRは直接操作できることが大きな違いです。
例えば、医療現場で身体情報をデジタル化したものを投影して手術のシミュレーションを行ったり、遠隔手術の実装に向けた実証実験が始まっているとされています。
また現実世界にある建築物や車などに対してバーチャルの映像を重ね合わせるように操作し、幅や高さなどの詳細を比較することもできます。
3-4. SR(代替現実)とDR(減損現実)
SR「Substitutional Reality」、DR「Diminished Reality」という技術にも注目が集まっています。
SRは仮想の映像を現実であるかのように映し出す技術です。
代替現実感とも表現されます。
エイリアンヘッドとよばれるSRデバイスを装着し、すでに編集された過去の映像と現実に見えている映像を融合させて投影します。体験者はデバイスを着用している現在に起きていることなのか、過去に起こったことなのかの区別ができなくなると言われています。
現実とバーチャルの境界を溶解させる技術であるため、「メタ認知」(自分が認知していることを客観的にみること)に関する実験や研究への活用などが期待されています。
SRが仮想の画像を表示させるのに対して、DRは実際の画像から特定のものを仮想的に消す技術です。
実際に存在する物体を存在しないかのようにするもので、隠消現実感や減損現実と表現されます。
静止画像の一部を仮想除去する技術は普及していましたが、DRはリアルタイムに映し出されているものの一部を除去することができるため、フィルターアプリなどにも活用されています。
また人や自動車が頻繁に行きかう場所にある建造物を解体した後の、景観の予測などにも役立つだろうとされています。
4. XRとメタバース
4-1. メタバースとは何か
メタバース(Metaverse)は、仮想世界やデジタル空間の新たな概念です。
インターネット上にあるメタバース(仮想空間)に、アバターという自分自身の分身となるキャラクターを使い空間内を動き回ったり、他のアバター(ユーザ)とコミュニケーションを取ることができます。
ゲームを楽しむ人であれば、『マインクラフト』や『あつまれ どうぶつの森』などがメタバースの例としてわかりやすいのではないでしょうか。
イベントやコンサートなどエンターテイメント領域での活用が多く話題となるメタバースですが、ビジネスでも利用されています。
メタバース空間で買い物ができるアパレルショップや、いつでも住宅の見学が可能なメタバース展示場などサービスとして提供されているものに加えて、社員総会や社内研修にメタバースを活用する企業もでてきました。
またメタバース上にある土地は現実世界の不動産と同じく資産価値があると言われていることから、メタバース内で土地購入をしてビジネス利用を計画している企業も存在します。
4-2. メタバースとXRの違い
XRとメタバースは類似しているように思えますが、根本的な違いが存在します。
XRは主に現実世界と仮想世界(デジタル)の融合をするための特定の技術を指します。
一方、メタバースは複数の仮想世界を統合して社会的相互作用(コミュニケーションなど)や経済活動を目的としています。
それぞれの目的や定義は異なりますが、VRゴーグルなどのXR技術を用いることでよりリアルにメタバースに没入することができるようになるなどシナジー効果も高く、メタバースとXRはお互いに影響しあう関係であることがいえるでしょう。
5. XRとデジタルツイン
5-1. デジタルツインとは何か
デジタルツインとは、現実の世界から収集したデータをデジタル技術を用いて仮想空間に再現する仕組みを指します。
主に製造業の分析・シミュレーションなどへの活用が注目されています。
例えば現実世界の製造工場の内部を仮想世界にデジタルデータとして複製して可視化することで、効率化やコスト削減、リスクマネジメントなどに利用・活用できます。
5-2. デジタルツインとXRの関係
デジタルツインは「XR」「IoT」「AI」「5G」の4つの技術から構成されています。
IoTはあらゆるモノがインターネットについながり相互通信ができる技術、AIは人工知能、5Gは高速通信技術です。
それらに加えてVRやARなどで視覚的にデジタル情報を付加することで拡張現実を創り出し、デジタルツインを実現させています。
導入には高度な技術力が必要とされますが、今後さらに社会実装が進むことが予想されており、都市計画などのスケールへも拡大の動きがあるようです。
おわりに
ここまでXRと、XRと関わるさまざまな技術についてまとめてきました。
未来はより豊かなデジタル体験が私たちを待っていることでしょう。
今後もXR技術やメタバース、デジタルツインの進化に注目していきましょう。