この記事でわかること
・ 実務を行えるAIエージェントに変える「Skills」の仕組み
・ ルーチン業務をAIに丸投げできる「Workflow」の役割
・ 外部ツールとAIを繋ぐ世界標準 「MCP」 の概要
「Skills(スキル)」や「Workflow(ワークフロー)」という言葉をご存じでしょうか?
一般的な業務でもよく使われる言葉ですが、実は最近、AIの領域できわめて重要なキーワードとして注目され始めています。
なぜなら、この2つこそが「言葉を操るだけの生成AI」を、「実務を完遂できるAIエージェント」へと進化させるためのピースだと考えられているからです。
この記事では、次世代AIの標準機能、「Skills」と「Workflow」について、その革新性を分かりやすく解説します。
チャットボットの限界と、AIエージェントへの進化
多くの企業でも導入されている対話型の生成AIは、非常に優秀な頭脳を持っています。
しかし、そこには一つの課題がありました。
それは、外部ツールを直接操作できないという点です。
例えば、「来月の売上予測をグラフにして欲しい」そう思っても、従来のチャットボットは「作り方」を教えることしかできませんでした。
実際にExcelを開いてグラフを作成するのは、依然として人間の仕事だったのです。
この「知ってはいる(知識はある)が、実行できない」という壁を突破するのが、「Skills(スキル)」と「Workflow(ワークフロー)」です。
Skillsとは「AIを実行者に変える」拡張機能
Skillsとは、AIに対して特定の外部ツールやシステムを操作する権限を与えるための拡張機能です。
スマートフォンに例えるならば、AIモデルは「OS」であり、Skillsは「インストールするアプリ」に相当します。
AI:文脈を理解し、判断を下す「頭脳」
Skills:Web検索、ファイル編集、メール送信などを実行する「手足」
ここでの重要ポイントは、生成AI単体では外部システムを直接操作できないという点です。
外部ツールを実行するには、ツール連携機能やエージェント基盤との統合が必要になります。
それぞれが出来ることの範囲を、レストラン経営に例えてみましょう。
生成AI ▶ レシピを知り尽くしたアドバイザー

調理法は完璧に答えてくれますが、実際に手を動かすことはできません。「作り方」を教わる相手です。
AIエージェント ▶ あらゆる道具を自在に操る、三ツ星レストランの総料理長



知識だけでなく、包丁やオーブン(Skills)までを自在に使いこなし、全てを自分で完結できます。
つまりSkillsとは、この「総料理長(AIエージェント)」に与えられる「調理道具セット」や「厨房の権限」のようなものです。
これらを手にしたAIは、実務を担える実践的なパートナーへと進化するのです。
Skillsで可能になる「3つの自動化」
ではSkillsを活用することで、具体的にどのような業務変革が可能になるのでしょうか。
代表的なビジネスシーンでの活用例を挙げます。
1. リアルタイム・リサーチの自動化
従来の生成AIは、学習データに含まれる過去の情報しか知りませんでした。
しかし、「ブラウジングスキル」を与えられたAIエージェントは、自らインターネットにアクセスできます。
「競合他社A社の最新プレスリリースを確認し、要点をまとめて」と指示すれば、エージェントがWebサイトを巡回し、最新情報に基づいたレポートを作成します。
2. ドキュメント作成の実務代行
「ファイル操作スキル」を与えられたAIエージェントは、ExcelやWord、PowerPointを直接編集することが可能です。
「売上データ(CSV)を読み込み、月次レポート(Excel)のフォーマットに合わせて転記して」という指示に対し、エージェントがファイルを開き、データを加工・保存するところまで完結させることができます。
3. 業務プロセスの連携
「外部連携スキル」を活用すれば、SlackやChatwork、Googleカレンダーなどの業務ツールを横断した操作が可能です。
「会議の議事録を作成し、関係者のカレンダーに次回定例をセットした上で、Slackで共有して」といった、複数のツールにまたがる定型業務も、AIエージェントが代行します。
Workflowとは「AIへの業務指示書」
前章で紹介したように、AIは「Skills」を得ることで様々な実務パーツをこなせるようになります。
しかし私たちが日々行っている業務は「検索して終わり」ではなく、「検索して、まとめて、共有する」といった一連の流れで成り立っています。
この「複数のSkills(手足)を、どのような順番で動かすか」を定義するもの。
それが「Workflow(ワークフロー)」です。
Skills単体でも業務効率は向上しますが、真価を発揮するのはSkillsとWorkflowを組み合わせたときです。
Skillsが「点」の作業を代行するものだとしたら、Workflowはそれらを繋いで「線」にするものと言えます。
「Workflowを設定する」と聞くと、複雑なフローチャートを描くようなシステム設定をイメージされるかもしれません。
しかし、最新のAIエージェントにおけるWorkflow設定はもっと直感的です。
Workflowの設定は、「人間用の業務マニュアルをテキストで書くこと」 にとても似ています。
一部のAIエージェント基盤では、業務マニュアルをテキストで記述するだけでワークフローとして設定できる仕組みも登場しています。
Workflow導入で実現する「高いレベルでの自動化」
ではWorkflowを設定することで、具体的にどのような業務変革が可能になるのでしょうか。
代表的な自動化の例を挙げます。
1. 「競合調査」を自動化する
例えば、競合調査業務。
これをWorkflowとしてAIに登録する場合、以下のようなテキストファイルを作成し、AIに渡します。
【業務名】毎朝の競合ニュースチェック
【目的】競合A社とB社の動向を把握し、チームに共有すること
【手順】
1. WebブラウザSkillを使って、「競合A社」「競合B社」の最新ニュースを検索してください。
(期間は「過去24時間以内」に限定すること)
2. 検索結果から、製品リリースや提携に関する重要な記事を3つピックアップしてください。
3. それぞれの記事を3行で要約してください。
4. 最後に、その要約をSlackの「#競合情報チャンネル」に投稿してください。
(投稿時は、チームメンバーへのメンション「@team」を付けること)
このような設定を登録します。
やはり、プログラミングコードを書く必要はありません。
普段の仕事を組み立てるように手順を書き出すだけで、AIエージェントはその通りにSkills(ブラウザ操作、要約、Slack投稿)を組み合わせて実行してくれます。
さらに言えば、このワークフロー(指示書)の作成自体を、AIエージェントに丸投げすることも可能です。
競合調査をしたいこと、手順を考えて欲しいこと、それらを伝えるだけでAIが最適なワークフローを提案してくれるのです。
つまり、「業務手順書(マニュアル)がある仕事」は、すべてAIエージェントのWorkflowとして登録できる可能性を秘めているともいえるのです。
このようにSkillsとWorkflowを整備することで、AIは「指示待ち」の状態から脱却し、「目的達成のために自律的に動くエージェント」として機能し始めます。
SkillsとWorkflowの実体と使い方
ここまで読んで、「難しそうだな」と感じた方、「結局SkillsやWorkflowとは、何なのか?」と疑問を持った方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、その「実体」を紐解いていきます。
もしかすると複雑なシステムを想像されたかもしれませんが、実はスマホにアプリを入れるのと同じくらい簡単なのです。
Skillsの実体は「小さなプログラム」
Skillsの正体は、Pythonなどで書かれた小さなプログラムファイルです。
ですがプログラミングをする必要はなく、「この業務を自動化するSkillsコードを書いて」とAIに頼むだけ。
そしてこれこそが、『バイブコーディング』と呼ばれるスタイルです。
あとは、そのSkillsファイルを所定のフォルダやサーバーに配置するだけです。


Workflowの実体は「ただのテキスト」
Workflowの正体は、普段の業務でも利用しているようなテキストファイルです。
複雑なシステムやフローチャートの画面を開く必要はありません。
「1. 競合を検索して」「2. 要約を作って」「3. Slackに投稿して」といった手順を、いつもの言葉でプレーンテキスト(.txt や .md など)として書き出すだけ。
1. 「競合調査」を自動化する でもご紹介しているようなものです。
あとは、そのテキストファイルをAIエージェントに読み込ませるだけです。
AIは「道具箱」から自分で判断して選ぶ
SkillsとWorkflowを配置したら、もう特別な設定は不要です。
AIエージェントは、実装されたSkills群を「自身のツールボックス」として参照しています。
ユーザーからのリクエストやWorkflow上の手順を読み取った際、AIは自らの判断で最適なツール(スキル)を選択し、順番に実行していきます。
ユーザーは、AIに「道具(Skills)」を与え、自然言語の「指示(Workflow)」を用意するだけ。
このSkillsとこのWorkflowを組み合わせる、といったような指示は必要ないのです。
そしてSkillsやWorkflowが増えることで、対応できる業務範囲はどんどん広がります。
AI時代に知っておくべき「MCP」という規格
「自社専用のSkillsを作るのは難しいのでは?」と思われるかもしれません。
ここで重要になるのが、「MCP(Model Context Protocol)」という世界共通規格です。
MCPはAIと外部ツールを接続するために使われるもの。
MCPに対応したAIとツールであれば、共通ルールで連携できる仕組みを提供します。
USBポートをイメージすると分かりやすいかもしれません。
なぜMCPが革命的なのか
これまでAIに外部ツールを繋ぐには、ツールごとに「特注の接続プログラム」を書く必要がありました。
口の形が違うケーブルを自作するようなイメージです。
しかしMCPはこの接続口を「USB-C」のように共通化しました。
これにより、SlackがMCPに対応していれば、専用のMCPサーバーや連携モジュールを導入することで接続できるようになります。
AIごとに特注で接続プログラムを書くという大変な作業が不要になったのです。
自分で作らなくても、「公式Skills」をダウンロードするだけ
Skills = やりたいこと(ソフト)
MCP = 繋ぎ方のルール(規格)
そう整理すると分かりやすいでしょう。
MCPという規格が普及したことで、Slack、Google Drive、GitHub、Notionといった一部の主要サービスでは、MCP対応の連携サーバーや公式コネクタの提供が始まっています。
実質的にはこれらはSkillsとMCPはセットになっており、MCPに対応したSkills(ソフト)をダウンロードすれば、すぐに動くという仕組みです。
今後は「自社の業務に必要なSkillsを選び、AIに装備させる」という作業が、IT管理者の重要な役割となっていくかもしれません。


まとめ
AIを導入したものの、結局メールの下書き作成くらいにしか使っていない。
もしそのような課題をお持ちであれば、次はAIエージェントに「Skills」という道具を持たせてみてください。
AI活用を「効率化ツール」から、ビジネスを加速させる「強力な戦力」へと引き上げるための、確実な一歩となるはずです。
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