中小企業の情シス部門は人員不足やスキル不足、定常業務の過負荷などのさまざまな課題に直面しています。
特に「ひとり情シス」や「ゼロ情シス」といった問題を抱える企業では、新たな技術や業務改善の導入が難しい状況にあるといわれています。
近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により『2025年の崖』とも称されるリスクが迫る中、どのような対策を講じていけばいいのか悩まれている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、中小企業の情シス部門が抱える課題と解決方法について考えていきます。
1. ひとり情シス・ゼロ情シスとは?
情報システム全般の運用・管理を1人ですべて担当する状況を「ひとり情シス」、専任の情報システム担当者が不在な状態を「ゼロ情シス」と呼びます。
現代のビジネスにおいてITの重要性が高まり、IT人材の需要は増加の一途をたどっています。IT競争が激化する中で、中小企業は優秀な人材の確保が難しいことに加え、在職者においてもキャリアアップの機会不足や業務の多忙さなどによる離職・転職が高い傾向にあるといわれています。
その結果、ひとり情シス・ゼロ情シスといわれる状態が引き起こされていると想定されます。
2. 2025年の崖とは?
2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」によると、日本全体でDXが推進されない場合のリスクとして、爆発的に増加するデータを活用できずに世界のデジタル市場で敗者となり、2025年以降の経済損失が年間最大12兆円に及ぶと予測しています。
『2025年の崖』を回避するためにはDX推進が必須となりますが、中小企業の情シス部門においては課題が山積しており、目の前の問題解決に追われてDXを進めにくいという状況があるようです。
3. 中小企業の情シス部門が抱える課題
業務範囲が広く業務量が多い
中小企業のひとり情シスやゼロ情シスは情報システム全体を担当するため、システムの運用・保守・トラブルシューティングや、機器の調達・キッティングなどの幅広い業務を一人でこなさなければなりません。
日常的に業務量が多いうえ、範囲の広さからどこに重点を置くべきかの判断が難しくなることがあります。
プリンターやアプリケーションの不具合、パスワードの紛失など、直接関係ないものについての問い合わせを受けることもあるでしょう。このような状況は担当者の負担につながります。
緊急時の対応の遅れに対する対応
システムトラブルや障害が生じた場合は即座に対処することが重要ですが、他の業務に追われることによる対応の遅れが考えられます。
担当者の不在時には迅速な判断が更に難しく、全体の業務への影響が発生する可能性があります。
また緊急事態に備えた計画やプロセスが整備できていない場合、災害発生時などの緊急時に対応が大幅に遅れる要因となるでしょう。
セキュリティ対策が疎かになる
セキュリティリスクを最小限に抑えるためには、定期的な監視や対策が必須です。
ひとり情シスやゼロ情シスにおいては情報のキャッチアップが遅れてしまったり、手が回らず監視体制が整っていないなど、セキュリティ対策が十分に行われないリスクがあります。
また従業員全体のセキュリティ意識が低いと、社内のセキュリティルールやポリシーが守られないなど、キュリティ対策が疎かになる可能性が高まります。全社員への適切なトレーニングや教育が必要ですが、そのためのリソースの確保が難しいかもしれません。
最新技術へのアクセスの難しさ
中小企業の情報システム部門は限られたリソースの中で運用されており、最新のIT技術やツールに対する投資が制約がある場合が多く、情報システム担当者が最新の知識やスキルを習得するための機会が限られているため、技術の進化に追従することやスキルアップが難しいという問題があります。
また業務多忙により学習時間の確保が難しい状況がスキル不足を招き、適切な運用や業務の品質向上に支障をきたすことが想定されます。
相談相手不在による精神的負担
新技術や新規システムの導入時には担当者として調査・判断する必要がありますが、「自らの判断が正しいのか」「自社環境に技術適用ができるのか」といったインターネット検索では解決できない悩みに直面することもあるでしょう。
IT課題は経営に直結することが多いために責任が重く、相談相手不在という状況による精神的な負担は大変大きいと考えられます。
4. 解決策
業務のアウトソース
限られたリソースを最大限に活用するため、専門的な業務をアウトソーシングすることを検討しましょう。信頼できる外部パートナーに委託することでコスト削減と専門知識の活用が可能です。
またアウトソースする工程で業務の洗い出しが必要となることから、「2025年の崖」問題の大きな原因と言われている、属人化による『システムのブラックボックス化』を防止することができます。
適切なツールの活用
業務の自動化や効率化には、適切なツールやソフトウェアの採用が重要です。システム管理やナレッジベースなど、業務に特化したツールを選定しましょう。問い合わせが多い内容などをまとめて社内に共有することで、問い合わせの数を減らすことができるでしょう。
また日頃の業務プロセスや手順を文書化しておくことで、担当者不在時の対応が円滑になりますし、新たな担当者が加わった際に業務を引き継ぐ効率も向上します。
クラウドサービスの導入
業務の柔軟性と拡張性を高めるために、クラウドテクノロジーの導入を検討しましょう。
データストレージやアプリケーション運用をクラウド上に移行することで、システム運用やメンテナンス工数を軽減できます。また必要な時にリソースを利用できる環境が整うため、コスト削減も期待できます。
クラウド移行時にはセキュリティ対策を徹底的に実施し、データのバックアップや復旧対策を含めた総合的な計画を練りましょう。
長期的な経営計画
DX推進は今後も企業の必須事項となりますが、まずはDXを組織全体で取り組むために、長期的な経営計画の策定が必要です。
組織のビジョンと目標に基づき、技術の進化を見越した戦略を策定し、DXプロジェクトを段階的に進めましょう。
従業員の教育と参加を促進して、持続可能な成長に向けた基盤を築くことを重要視することが大切です。
解決が困難と思われる課題があれば、外部の専門家やコンサルタントへの相談を検討してみましょう。
専門知識を活用しながら、自社に適したDX推進を実現できます。
まとめ
中小企業の情シスが抱える課題と解決策についてまとめました。
情シスの仕事は多岐にわたり、本記事に取り上げた以外にも様々な業務が存在します。DXを推進するためにも、情シス担当者の負担軽減は急務です。気になる課題があるのであれば、外部サービスやツールの利用を検討してみてはいかがでしょうか。