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能力が高すぎるAI「Claude Mythos」とは?Project Glasswingと合わせてわかりやすく解説

この記事でわかること
・ 「Claude Mythos」とはなにか
・ AIの能力が高すぎると、なぜ危険なのか
・ 世界の大手テック企業が今、本気で取り組んでいること

2026年春、AIの世界でひとつの事件が起きました。
米国のAI企業であるAnthropic(アンソロピック)が開発した最新モデルが、社内資料の誤った公開によって存在が外部に漏れてしまったのです。

その名は「Claude Mythos(クロード・ミュトス)」。

連日ニュースでもその動向が伝えられており、気になっている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、Claude Mythosの正体から世界規模で進む防衛の取り組みまで、わかりやすく解説していきます。
※本記事の情報は2026年5月公開日時点のものです。

目次

「ソフトウェアの脆弱性」とは

Claude Mythosの話に入る前に、ひとつ基本的な言葉を押さえておきましょう。
それは「脆弱性(ぜいじゃくせい)」という言葉の意味です。

脆弱性とは、ソフトウェアに潜む「抜け穴」のことです。
建物に例えると、誰かが鍵をかけ忘れた裏口のようなもの。
その抜け穴を見つけた悪意ある人物(ハッカーなど)が侵入し、情報を盗んだりシステムを停止させたりする行為が、いわゆる「サイバー攻撃」です。

病院のシステムが突然止まって診療ができなくなった、銀行の顧客情報が流出した——
こうした事件の多くは、この脆弱性を突かれたことが原因です。
Anthropicの公式資料によると、サイバー犯罪による世界全体の被害額は年間約500億ドルにのぼると試算されています。

そしてここが重要なポイントですが、これまで脆弱性を見つけるには、高度な専門知識を持つセキュリティの専門家が長い時間をかける必要があったということ。見つけること自体が難しかったのです。

ところが最近のAIは、その作業を自動でこなせるようになってきました。
そしてClaude Mythosは、その能力が突出して高いモデルなのです。

Claude Mythosとは

Claude Mythosは、一般には公開されていない最新モデルです。

世に知られるようになったきっかけは、公式な発表ではありませんでした。
2026年3月、Anthropicの社内資料が誤って外部に公開されてしまい、その存在が明らかになったのです。
その後、同年4月7日に正式に発表されました。

このClaude Mythosが特別な理由は、ひと言で言うと「ソフトウェアの抜け穴を、人間よりも上手く見つけられるAI」だということです。

前の章でお伝えした「脆弱性」を、人間がひとつひとつ指示しなくても自律的に発見し、さらにその抜け穴をどう悪用するかという手順まで自動で組み立てられます。

その性能は、Anthropicが現在一般公開している最新モデル「Claude Opus 4.6」と比べても、はっきりと上回っています。
たとえばセキュリティの評価基準「CyberGym」では、MythosのスコアはOpus 4.6より約17ポイント高い83.1%。
コードを書く能力を測る「SWE-bench Verified」でも93.9%と、Opus 4.6の80.8%を大きく超えています。

Anthropicはこのモデルについて「ほんの一握りの超優秀な専門家を除いて、脆弱性の発見と悪用においてAIが人間のトップレベルに達した」と述べています。

では、なぜ公開されていないのでしょうか。
理由はシンプルで、「能力が高すぎるから」です。

Mythosは脆弱性を見つけるだけでなく、攻撃手順まで自動生成できます。
これが悪意ある人物の手に渡れば、世界中の重要なソフトウェアを狙ったサイバー攻撃が、これまでよりはるかに簡単に、大規模に仕掛けられるようになってしまいます。

そのため、Anthropicは「悪用を防ぐための安全装置(ガードレール)が十分に整うまで、一般公開はしない」という方針を明確にしています。

実は能力が高すぎて出せないという状況は、AI業界では初めてではありません。
OpenAIが2024年に公開したChatGPTの音声機能「GPT-4o」も、デモ段階ではあまりに人間らしい感情表現をするため、「ユーザーが過度に感情的な依存関係を持ってしまう」という懸念から、フル機能での一般公開が見送られた経緯があります。
AI開発者たちは常に、性能と安全性のバランスに向き合っています。

AIはどこへ向かっているのか

Mythosのような能力を見ると、AI研究者の間で長年語られてきた「AGI」や「ASI」という概念が現実味を帯びてきます。

AnthropicのCEOであるDario Amodei(ダリオ・アモデイ)は2025年に発表したエッセイの中で、「AGI級のシステムは早ければ2026年にも登場しうる」と述べています。

Mythosはまだ「コーディングとセキュリティに特化したモデル」であり、AGIそのものではありません。
ですが、特定の分野では人間の最高レベルを超えたというMythosの登場は、AIが着実にその方向へ進んでいることを示す一つの証拠と言えるのかもしれません。

AGI(汎用人工知能/Artificial General Intelligence)
特定の作業だけでなく、人間と同様にあらゆる知的タスクをこなせるAIのこと。
現在のAIのほとんどは「画像認識」「文章生成」など特定分野に特化した「特化型AI」ですが、AGIはそれらを横断して人間のように柔軟に対応できる存在を指します。

ASI(人工超知能/Artificial Superintelligence)
AGIのさらに先にある概念で、あらゆる分野において人間の能力を大幅に超えるAIのこと。
現時点では仮説上の存在ですが、AGIが実現した先に訪れうる段階として、AI研究者の間で議論されています。

Project Glasswing とは

では、Anthropicはこの高い能力を持つMythosをどう使おうとしているのでしょうか。
その答えが、2026年4月7日に発表された「Project Glasswing(プロジェクト・グラスウィング)」です。

発想はシンプルで、「同じような能力を持つAIがいずれ悪用される前に、まず防御のために使い切ろう」というもの。
このプロジェクトには、AWS・Apple・Google・Microsoft・NVIDIA・Cisco・CrowdStrike・Palo Alto Networks・JPMorganChase・Linux Foundationなど、世界を代表するテック企業・セキュリティ企業約50組織が参加しています。

プロジェクト開始から約1ヶ月後の2026年5月22日、Anthropicは最初の成果報告を公開しました。
約50のパートナー組織と合わせて高・クリティカルレベルの脆弱性を1万件以上発見。
オープンソースソフトウェア1,000件以上のスキャンでも合計23,019件の問題が検出されました。

身近なところでは、多くの人が使うブラウザ「Firefox」で271件の脆弱性が発見・修正済み。
また、世界中の数十億台のデバイスで使われている暗号技術ライブラリ「wolfSSL」では、偽の銀行サイトを本物に見せかけられてしまう脆弱性も発見・修正されています。

そして注目すべきは、そのなかに「何十年も見過ごされてきたバグ」が含まれていたという点です。
27年間誰にも気づかれなかったバグや、16年・17年にわたって放置されていた脆弱性が、AIによって次々と発見・修正されました。
専門家が長年かけても気づけなかった抜け穴を、AIはわずかな時間で見つけ出せる——この事実が、今回のプロジェクトの意義をよく表しています。

一方で新たな課題も浮上しています。
AIが脆弱性を見つけるスピードは格段に上がりましたが、それを人間が確認・修正する速度が追いつかないという問題です。
「発見する力」と「直す力」のバランスをどう整えるか。それが、次に取り組むべき問いになっています。

オープンソースソフトウェアとは、設計図にあたるソースコードが公開されており、誰でも無償で使えるソフトウェアのこと。私たちが日常的に使うサービスやシステムの多くが、その基盤として利用しています。

私たちの生活・仕事への影響は

Mythosや脆弱性に関する報道は大手テック企業の話で、自分には関係ないと感じるかもしれません。
しかし、今回発見された脆弱性はFirefoxやwolfSSLのように、私たちが日常的に使っているソフトウェアの中に潜んでいたものです。

裏を返せば、Project Glasswingの取り組みによってそれらが修正されていることは、私たちの日常のデジタル環境が着実に安全になっていることを意味しているといえるでしょう。

個人でできる対策として、今も昔も変わらず有効なのが「ソフトウェアのアップデートをこまめに適用すること」です。
脆弱性が発見されて修正プログラムが公開されても、アップデートを適用しなければその恩恵を受けられません。
このことは、AIが大量の脆弱性を発見できるようになった今、以前にも増して重要になっています。

Anthropicは「安全装置が整い次第、Mythos級モデルの一般公開を目指す」と明言しており、この分野の動向はまだ始まったばかりです。

まとめ

Claude Mythosの登場とProject Glasswingの取り組みは、AIの進化がセキュリティの世界にどれほど大きなインパクトをもたらすかを見せつけました。

AIは今、守る力と攻める力を同時に高めています。
その最先端で起きているのがこの話ですが、根っこにあるのは「私たちが毎日使うインターネットやソフトウェアをどう守るか」という、誰にとっても身近な問いです。
この分野の動きは今後も加速し続けるでしょう。
Mythosの次に何が来るのか、目を離さずにいたいところです。

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